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「自分のプレーはまだ完成形ではない」谷晃生、歴代最強の日本代表へ──語られる“食らいつく覚悟”

「今は50%。でも、ピークを1年でも2年でも長くしたい。」2019年にJ1デビューを果たし、東京五輪では日本のゴールを守った谷晃生。それでも彼は「自分のプレーはまだ完成形ではない」と言う。ワールドカップへの強い思い、歴代最強と言われる日本代表から受ける刺激、そして、「ボールに触らずに勝つのが理想」というGK哲学。J1最少失点を記録した守護神は、さらなる高みを目指し続ける。谷晃生が語る、成長のための準備と未来への決意とは?※トップ画像撮影/松川李香(ヒゲ企画)

Icon       池田 鉄平 | 2025/03/27

「190cmあるように見えないプレー」を目指して

――Jリーグや五輪でのプレーを見ていて、今までの日本人GKにはないタイプというか、サイズを活かしながらもシュートコースを消すのが上手いと感じました。プレースタイルで特に意識していることはありますか?

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撮影/松川李香(ヒゲ企画)

今でもそうですが、僕は身長190cmありますけど、「190cmあるように見えないプレー」 を意識しています。

大型のGKは動きが鈍く見えたり、アジリティが落ちると言われがちですが、僕は機動力を武器にしたいと思っています。そのために、ステップワークや足の運びを重視し、単に大きく構えるのではなく、素早い動きと柔軟な対応を意識しています。

――予備動作の部分ですね?

そうですね。身長が高くない選手が武器にしているような俊敏な動きを、190cmの自分が兼ね備えられれば、より優位に立てると考えています。

世界には自分よりさらに大きなGKがたくさんいます。そんな中で勝っていくためにも、自分の持ち味を伸ばし続けることが重要ですし、そこが自分の長所でもあるのかなと思っています。

「完成形」まであと50%──ピークを長くするために

――谷選手の理想の100%を「完成形」とすると、今はどれくらいのパーセンテージまで来ていますか?

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撮影/松川李香(ヒゲ企画)

謙虚に言えば30~40%くらいです。でも、経験値や積み上げてきたものを考えれば、50%くらいまでは来ているとも言えますね。

一般的にGKは30歳前後がピークだと言われていますが、僕は「そのピークを1年でも2年でも長くできる」と思っています。

2019年からJ1でプレーさせてもらっている経験は、自分にとって大きなアドバンテージです。試合を重ねるごとに成長し、理想の自分に近づいていきたいですね。

「ワールドカップに行く」目標はブレない

――来年にはワールドカップも控えていますが、代表に対する思いは今どのような感じでしょうか?

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撮影/松川李香(ヒゲ企画)

ワールドカップは、子どもの頃からの一番の夢です。

前回大会では代表に選ばれ続けていたものの、最終メンバーには入れず、本当に悔しい思いをしました。ただ、その後アジアカップのメンバーに入ることができ、「また次に向けての戦いが始まった」と感じています。

GKは、監督やスタッフの評価が大きく影響するポジションです。だからこそ、「結果を出し続けるしかない」 と思っています。

特に安定感、ビルドアップの精度、試合の流れを読む力 を高めることが、今の代表に求められていると感じています。

代表への思いはもちろん強いですし、ワールドカップに行くという目標はずっとブレていません。

「代表での刺激」──東京五輪世代の成長

――今の日本代表は「歴代最強」とも言われていますが、代表に参加することで得られるものや、刺激になっていることはありますか?

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撮影/松川李香(ヒゲ企画)

やっぱり、代表にいる選手たちはそこにいる理由があります。

それぞれの取り組み方や考え方が本当にレベル高いので、合流するたびに刺激をもらっています。特に、サッカー選手としての向き合い方や、人としての姿勢には学ぶべきことがたくさんありますね。

東京五輪を経験した選手たちの多くが、その後ワールドカップに出場し、今はさらに高いステージで戦っています。

日本代表としての価値も上がり、「世界からの見られ方」も確実に変わってきていると感じます。

その先頭を走っているのが今の代表メンバー。僕もそこに加わりたいという気持ちは強いですし、「他人事ではなく、しっかり食らいついていく」という意識でいます。

「物に執着しない」ミニマリスト的思考

――話は変わりますが、谷選手にとって「これは一生手放せないな」と思うアイテムはありますか?

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撮影/松川李香(ヒゲ企画)

うーん…正直、特にないですね(笑)。

――例えば、何回引っ越ししても「これは捨てずに持っていく」というものは?

サッカー用品でいうと、スパイクやグローブはどんどん新しくなるので、あまり残さないですね。使わなくなったものは、欲しいと言ってくれる人にあげたり、育成の選手に譲ったりします。

――物に対して執着がないタイプ?

そうですね。「自分の身さえあれば何とでもなる」 と思っているので、必要なものがあればその都度買えばいいし、「ずっと持ち続ける」という考え方があまりないんです。

物は少ない方が好きですね。できるだけシンプルに、必要なものだけを持つようにしています。

「スーパーセーブよりも嬉しいこと」──谷晃生が語る“最高の瞬間”

――そんな谷選手が、サッカー選手として、最高に高揚感を感じる瞬間はどんな時ですか?

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撮影/松川李香(ヒゲ企画)

味方がゴールを決めた瞬間ですね。それが一番嬉しいです。

――自分のスーパーセーブをした時よりも?

僕はそもそも「ボールが来てほしくない」と思っているので(笑)。ゴールキーパーとしては、できるだけボールに触らずに勝つのが理想です。

――なるほど、それが究極の理想形ですね。

もちろんセーブをしても「やった!」という感情はあるんですが、僕はあまり感情を表に出さないタイプなので、それよりも味方がゴールを決めた時の方が純粋に嬉しいですね。

――それは、自分が試合に出ていない時でも同じ気持ちになりますか?

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撮影/松川李香(ヒゲ企画)

はい、それは変わらないです。試合に出ていなくても、チームが勝つためにはゴールが必要ですし、それが決まった時の喜びは変わりません。

――いい話ですね。それがやっぱり一番の原動力なんですね。

やっぱり勝つためには得点が必要なので。そこに対する喜びは、何よりも大きいですね。

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「這い上がる覚悟」──“谷晃生”、逆境を越えた守護神の決断

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谷晃生、東京五輪からJ1最少失点へ──勝負を分ける「チャンスを掴む準備」

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▼谷選手を応援しにスタジアムに行こう!
【試合情報】
日程・4月6日(日)14:00キックオフ
対戦・川崎フロンターレ
場所・町田GIONスタジアム

チケットはこちら(https://www.jleague-ticket.jp/club/mz/)


谷晃生(たに・こうせい)
2000年11月22日生まれ、大阪府出身。ガンバ大阪育成組織から高校3年でトップチームのメンバーとして出場。2020年期限付き移籍した湘南ベルマーレでJ1デビューを果たす。2023年ガンバ大阪からベルギーF C VデンデルE Hへ移籍、2024年からFC町田ゼルビアにてプレーしリーグ最少失点に貢献。2025年から完全移籍。2021年の東京五輪ではフル出場、FIFAワールドカップカタール2022アジア最終予選メンバーにも選出されている。

Photo:Rika Matsukawa