
日本代表を変える“フィジカルモンスター”たち──次世代の主役は誰だ?
かつて、日本代表は「技術はあるが、体格では欧州や南米にかなわない」と言われてきた。だが、時代は変わった──。近年、Jリーグや代表チームで台頭してきたのは、“フィジカル”を武器にする新世代の選手たち。サイズ、スピード、パワー、そして空中戦。彼らは、かつて弱点とされた領域を“強み”に変える存在だ。今回は、そんな「日本代表の景色を変えるかもしれない」フィジカルモンスターたちをピックアップする。※トップ画像出典/Getty images

高井幸大(川崎フロンターレ)

──「高さ」と「冷静さ」を兼ね備えた、新時代の守備の要・高井幸大
197cmのシュミット・ダニエル、194cmのハーフナー・マイク――その系譜に名を連ねるのが、192cm・90kgのセンターバック、高井幸大だ。
川崎フロンターレの下部組織出身で、足元の技術と判断力を備える“現代型CB”。2023年にU-23代表としてパリ五輪に出場し、9月のW杯予選・中国戦でA代表デビュー。Jリーグ全試合出場&ベストヤングプレイヤー賞の実績を残した。
空中戦ではアジア屈指の強さを誇り、ビルドアップの起点としても信頼できる存在。冷静沈着なプレーぶりから、「未来のキャプテン候補」とも言われている。
2025年3月に行われたW杯アジア最終予選・サウジアラビア戦では、20歳ながらA代表の先発に抜擢され、まるでベテランのような落ち着きぶりを見せた。スコアは0-0の引き分けだったが、高井の存在感は際立っていた。
プレー中の堂々たる佇まい、冷静な読み、そして危機察知能力。加えて、物腰柔らかく謙虚な性格から、すでに「未来のキャプテン候補」として名前が挙がっている。
「日本の最終ラインを、世界に通用する武器に」高井幸大の挑戦は、ここからさらに加速する。
関根大輝(スタッド・ランス)

──右サイドに現れた“ポスト酒井宏樹”
187cm・82kgという、サイドバックとは思えないフィジカルを誇る関根大輝。静岡学園ではセンターバック、大学進学後にサイドバックに転向するや否や、たった数年でA代表にまで登り詰めた異色のキャリアを持つ。
フィジカルだけでなく、正確なクロスや足元の技術も魅力。指導者たちからも「まるで若き日の酒井宏樹」と高く評価されている。現在はフランス1部スタッド・ランスに完全移籍。すでにパリ・サンジェルマン戦で欧州デビューも果たし、世界の舞台でもその力を証明しつつある。
望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)
──静かなる覚醒。日本の壁へと成長中
192cmの大型センターバック、望月ヘンリー海輝。2024年に国士舘大学からFC町田ゼルビアに加入すると、ルーキーイヤーにJ1で26試合出場。同年9月にはA代表に初招集された。スピード、身体能力、空中戦の強さは折り紙付き。ポジショニングなどの細かい守備対応には課題を残すが、経験を積むごとに逞しさを増しており、チームの守備の軸として急成長中だ。森保一監督が早い段階から「注目している」と公言していた逸材であり、将来のA代表の最終ラインを支える可能性は非常に高い。
チェイス・アンリ(シュトゥットガルト)

──“異次元フィジカル”の遅咲きCB
187cm・80kg。アメリカ人の父と日本人の母を持ち、“全身が筋肉の塊”とも言えるチェイス・アンリは、今もっとも“規格外”な存在かもしれない。中学から本格的にサッカーを始め、高校時代には湘南ベルマーレで注目を集め、ドイツ・ブンデスリーガのシュトゥットガルトへ。2023年にはチャンピオンズリーグでも出場した。「自分が一番下手」という自覚を持ちながら、コーチや仲間から吸収し続ける学習意欲と努力で、技術の差を埋めつつある。「彼の成長は鳥肌モノ」と指導者も絶賛するほど。唯一の懸念は“代表選択”。アメリカ代表も視野に入れており、最終的にどちらの国を選ぶのかが注目される。
後藤啓介(アンデルレヒト)
──未来の“フィジカル系エース”が欧州で覚醒中
191cmの超大型ストライカー・後藤啓介。2023年にジュビロ磐田で高校2年にしてJ2デビューし、いきなり2ゴール。以降も継続的に結果を出し、ベルギーの名門アンデルレヒトへ移籍を果たした。セカンドチームでゴールを量産すると、トップチーム昇格後にはヨーロッパリーグでもデビュー戦ゴール。勢いそのままに2024年冬には完全移籍を勝ち取った。かつては線の細さが課題とされたが、海外で5kgの筋肉を増やし“本物のフィジカルストライカー”へと変貌しつつある。2026年W杯代表入りも、夢物語ではない。
世界の“本物”は、さらに先にいる
たしかに、日本代表にもここまでフィジカルで勝負できる選手が出てきた。しかし、世界のトップを見れば、まだまだ上がいる。
アーリング・ハーランド(ノルウェー):195cm/87kg
ロメル・ルカク(ベルギー):190cm/94kg
フィルジル・ファン・ダイク(オランダ):195cm/92kg
彼らのレベルはもはや「モンスター」ではなく「現象」だ。ちなみに我らが大谷翔平も193cm/95kg。スポーツ界の超人たちが世界を変えつつある。
※「FootyStats」の統計データを参照
──進化型モンスターたちが変える未来
サイズだけではない。それを活かすスピード、テクニック、戦術理解、そして人間性。
今回紹介した若きフィジカルモンスターたちは、単なる“大きな選手”ではない。彼らは、体格に加えて“頭と心”も鍛えられた、新時代の代表候補たちだ。世界と渡り合うために必要なピースは、もう揃いつつある。あとは彼らが、自らの足で未来の扉を蹴破るだけだ。
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