
大谷翔平・佐々木朗希・山本由伸だけじゃない!今年に懸ける日本人メジャーリーガーたちの展望
3月18日から日本で開催されるロサンゼルス・ドジャース対シカゴ・カブスを皮切りにメジャーリーグが開幕。前人未踏の“50-50”を達成した大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希(ともにドジャース)、オールスターにも選出された今永昇太、鈴木誠也(ともにカブス)といった日本人選手の活躍が注目されている。しかし、海を渡って戦う日本人メジャーリーガーは彼らだけではない。今回は今季に懸ける熱意が強いプレーヤーたちの活躍を展望する。※トップ画像出展/photoAC

屈辱だった昨シーズンからの再起を誓うベテラン・前田健太
メジャーリーグで節目となる10年目となるシーズンを迎える、デトロイト・タイガースの前田健太。これまで日米通算165勝を挙げてきた日本を代表する右投手だが、昨季の前田はシーズン途中に先発からリリーフに降格し3勝7敗、防御率6.09というふがいない成績に終わり、ポストシーズンでも登板機会がないままだった。2021年にトミー・ジョン手術を受けて以来、年々成績が下降しているだけに2025年に懸ける思いは強い。
オフは例年より2か月早くキャッチボールやトレーニングを始め、調整方法を大きく改善。「若い頃と同じ調整では変われない」と、体のキレを取り戻すことに時間を費やした。また、変化球に関しても大きな決断をした。メジャーで多くの投手が投げるスイーパーを封印することに。変化量の大きいスイーパーを追求するあまり、前田の代名詞だったスライダーの曲がりが速くなってしまい痛打されるケースが増えた苦い経験を踏まえ、スライダーの精度を高めることだけに集中している。
オープン戦でも安定した結果を残しており、先発ローテーション入りの可能性は十分。昨季サイ・ヤング賞のタリク・スクーバル、ドジャースから加入したジャック・フラハティ、リース・オルソンに次ぐ先発投手として復活を遂げてくれそうだ。
剛速球とフォークでニューヨーカーを再び驚かせる千賀滉大
最速164キロの速球と“お化けフォーク”と称される落差の大きいフォークボールを武器に、強打者を封じてきたニューヨーク・メッツの千賀滉大。2023年に福岡ソフトバンクホークスからメジャー移籍した1年目は12勝7敗、防御率2.98と好成績をマークし、ニューヨークの熱狂的なファンを虜にしたが、昨季は肩や上腕、ふくらはぎをたびたび負傷。わずか1試合のみの登板に終わった。そんな千賀も復活に向けて情熱の炎を燃やしている。
リハビリに費やしたオフを経て、今季は体調万全でキャンプに合流。フォームの確認をはじめ、じっくりと体を仕上げていった。オープン戦では154キロの速球で押しつつ、得意のフォークや本格的に投げ始めたシンカーを投じ、その独特な変化で相手打者を手玉に取り、完全復活をアピール。指揮官やメディアも千賀をエース格として構想しており、15勝以上を期待されている。
最多勝争いを目指す“考える”サウスポー・菊池雄星
埼玉西武ライオンズに入団後、150キロ台後半のスピードボールを投げる本格派サウスポーとして順調に成長し、2017年には最多勝と最優秀防御率を獲得した菊池雄星。2019年に満を持してシアトル・マリナーズに移籍すると、6勝とまずまずの成績をマーク。しかし、その後は菊池としては不本意なシーズンが続く。転機となったのはトロント・ブルージェイズに移籍後の2023年。制球力重視のピッチングスタイルに切り替えて11勝6敗、防御率3.86で初の規定投球回数に到達。また、2024年はシーズン途中でヒューストン・アストロズにトレードされたが、すぐにチームに溶け込んで安定感ある投球を披露した。
そんな菊池はロサンゼルス・エンゼルスと大型契約を結んだ今季が、集大成のシーズンになると考えており、オフも精力的にトレーニングとコンディショニングを繰り返した。また、被打率は低いものの右打者の外角に外れることが多かったチェンジアップの制球力を高めるための練習に専念。そんな甲斐もあって開幕投手の指名を受けた。読書好きで研究熱心なことで知られる菊池。メジャーのデータ野球を凌駕する、考えるピッチングで最多勝争いに挑む。
右肩を手術した吉田正尚は正念場のシーズンに…
2023年のWBCで4番を担った、ボストン・レッドソックスの左打者・吉田正尚。右肩の激しい痛みに苦しみ続けたスラッガーは今季こそ名誉挽回を狙っている。
メジャー2年目となる2024年は打率.280、10本塁打と及第点の数字を残したが、前年より成績をダウンさせたこともあり、オフにはトレードの噂も浮上した。右肩の痛みゆえにDHの起用が多く、DH候補のスラッガーたちと比較されたためだ。そんな吉田はレフトでの出場復帰を目指して、オフに右肩関節唇にメスを入れることを決意。現状はリハビリ段階でDHとしてオープン戦に出場しているが、肩の不安が癒えたことで持ち前の巧みなバットコントロールが冴え渡るようになり、逆方向への強い打球も飛び出している。
しかし、現地メディアは「開幕は負傷者リストで迎えるのが濃厚」と報じており、肩が万全になってからレフトでの復帰が予想されている。大谷翔平や鈴木誠也にも負けないパワーを持っている日本人打者だけに、このままでは終わらないはずだ。
マイナーからの這い上がりを目指す剛腕・藤浪晋太郎
198センチの長身を活かした豪快なフォームから最速165キロを投じる藤浪晋太郎。今季からシアトル・マリナーズとマイナー契約を結び、招待選手としてキャンプに参加してメジャー昇格に向けて奮闘している。
昨季はニューヨーク・メッツに入団するも、課題とされているコントロールが定まらず、四死球を連発して自滅。マイナーのままシーズンを終えた。2023年にメジャー移籍して以来、全く成績を残せていない現状に藤浪も焦りを感じており、オフにはプエルトリコのウィンターリーグに参加。実戦での落ち着いた投球を思い出すために手段は選ばなかった。また、カットボールやスプリット以外の球種として、ナチュラルにシュートしていく高速ツーシームを試すなど、メジャー復帰のためにもがき続けている。
しかし、ここまでオープン戦では圧倒的なピッチングで無失点に抑える試合もあれば大乱調の試合もあり、首脳陣の評価はいまいち。特に2アウトを取ってからの四死球が目立ち、制球難を克服はできていないようだ。間違いなくポテンシャルは世界トップクラスだけに、2年ぶりのメジャー昇格を掴んでほしい。
今季のメジャーリーグはマイナー契約も含めると、16人の日本人選手がプレーをする。日本に凱旋する選手や今回紹介した選手はもちろん、全員の動向にも注目してみてほしい。