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打者が恐れる魔球集結!プロ野球の新星たちが放つ驚異の変化球

大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)のスイーパー、千賀滉大(ニューヨーク・メッツ)のフォークのように強打者を驚かせる変化球を持つ好投手がいる。しかし、まだまだ日本球界にはとんでもない曲がりをする変化球や見たこともない軌道を描く魔球を投げる投手もいる。そこで球種別に彼らのボールのすごさを解説していく。※トップ画像出典/photoAC

Icon setodaiki ph 瀬戸大希 | 2025/03/20

マッスルボディーから火の玉ストレートを投げる工藤泰成

四国アイランドリーグ・徳島インディゴソックスから阪神タイガースに育成ドラフト1位で入団した工藤泰成。趣味は筋トレで140キロのベンチプレスを持ち上げる怪力を誇り、筋骨隆々とした肉体から“マッチョマン”と呼ばれている。そんな工藤が投じるストレートが「エグすぎる」と騒がれている。

たくましい腕をしならせるように投げるフォームから繰り出されるストレートは練習試合でいきなり158キロを計測。バットをへし折るほどの重い球威と低めの伸びはすでに球界トップレベルに達している。支配下登録を勝ち取った工藤は3月15日に行われたシカゴ・カブスとのプレシーズンマッチにも登板。メジャー有数の強打者たちにストレートで真っ向勝負し、たびたび空振りを奪った。衝撃度抜群のストレートを武器に、中継ぎ勝ちパターンの一角を担ってくれるはずだ。

器用な手先を生かした新魔球・キックチェンジを操る伊藤大海

北海道日本ハムファイターズのエース右腕・伊藤大海。ピンチでも動じないマウンド度胸と多彩な変化球を武器に、昨季は5完投を含む14勝をマークして最多勝と最高勝率のタイトルを獲得。そんな伊藤がさらなる飛躍を目指して覚えた変化球・キックチェンジが「見たことがない軌道」「キャッチャーも捕れないのでは…」と言われて注目を浴びている。

メジャーリーグで流行しつつあるキックチェンジは、シンカーのように逃げながら落ちていく変化球。しかし、手元で揺れることもあれば、そのまま伸びてミットに収まることもある予測不能の魔球だ。制球が難しく指先が器用な伊藤だからこそ投げられるボールで、オープン戦で何度か披露しているが、まだ思うように操れていない様子だった。キックチェンジを使いこなせるようになれば、今季もパリーグの打者を制圧するだろう。

分かっていても打てないスライダーで仕留める今井達也

多くのプロ投手が投げるスライダー。その中で、ダントツの奪三振率を誇る一級品のスライダーを投げるのが埼玉西武ライオンズの今井達也だ。

投球の9割近くが150キロ台のストレートとスライダーだけで構成される今井だが、昨季は187個で奪三振王に輝いた。「分かっていても打てない」と評されるスライダーは、曲がりながら縦に落ちていくのが特徴だ。その独特な軌道にはある秘密がある。手首の角度を意識して投げることでジャイロ回転が生まれて、変化の幅やタイミングが不規則になるので同じスライダーでも打者は的を絞ることができないのだ。今季は開幕投手に内定している今井。唯一無二のジャイロ回転スライダーでバッターを圧倒していく。

視界から消える髙橋宏斗の高速スプリット

昨季は7月に4勝、防御率0.00と圧倒的な成績で月間MVPを受賞し、球団記録を70年ぶりに更新する防御率1.38で最優秀防御率のタイトルに輝いた中日ドラゴンズの若き大黒柱・髙橋宏斗。彼が投じるスプリットも最高レベルの変化球だ。最速158キロのストレートとほぼ同じ軌道でストライクゾーンから高速で落ちるボールで、打者からは「視界から消える」と脱帽されるほどのキレと落差を誇る。2023年まではスプリットの制球が定まっておらずワンバウンドになることも多かったが、コントロールの精度が上がったことで強打者を牛耳る魔球になった。横の変化をする変化球も駆使して自慢のスプリットを生かす投球をすれば、さらなる飛躍もあるだろう。

打者のタイミングを外すチェンジアップを投げる東克樹

昨季は13勝4敗をマークして日本一にも貢献した、横浜DeNAベイスターズのタフネス左腕・東克樹のチェンジアップも魔球の一つだ。

東は球速の異なる2種類のチェンジアップを持っているが、特に威力満点なのが遅いチェンジアップだ。入団当初から落差が大きく捉えづらい軌道だったが、リリースポイントを下げたことで強く腕を振れるようになったことで魔球へと進化。他の投手が投げるチェンジアップ以上に打者の手元で減速するように感じ、相手打者がミットに入る前に状態が泳いで三振をしてしまう場面が目立った。また、このチェンジアップを両コーナーに正確に投げ分けることができるのも東の強みだ。今季も伝家の宝刀・チェンジアップを軸に2年ぶりの最多勝を狙う。

戦力外から這い上がった石川達也のスクリュー

横浜DeNAベイスターズに在籍していた昨季も15試合で防御率1.93と安定した成績を残すも、戦力外通告を受けた左腕・石川達也。しかし、左腕不足の読売ジャイアンツに拾われた石川は、すさまじい変化をするスクリューを武器にオープン戦で結果を積み重ね、開幕ローテーション入りを勝ち取った。

石川が本格的にスクリューを投げるようになったのは昨夏。ボールを浅めに挟んで中指を使わずに押す感覚で投げるとコースによって横や斜め、縦と異なる変化をするように。この魔球を手に入れてからはピッチングの幅が広がった。3月16日のシカゴ・カブスとのプレシーズンゲームでもメジャーの強打者を独特なスクリューで三振に仕留めてみせた。スクリュー以外にもチェンジアップにも自信を持っている石川。新天地でのブレークに期待したい。